妊活中に「葉酸」や「鉄分」を意識する人は多いですが、「亜鉛」まで気にしている人は少ないかもしれません。
実際、当グループでの子宝相談の初診時に確認すると、亜鉛は意識して摂取していない方がほとんどです。
でも実は、亜鉛は妊娠の成立だけでなく、その後の出産・育児、さらには子どもの健康にも大きく関わっています。
この記事では、「妊活に必要な亜鉛」という視点から、なぜこのミネラルが重要なのかを、男女の生殖機能、ホルモンバランス、精神状態、腸内環境まで多面的に整理します。
「摂るだけではなく吸収できる体づくり」が鍵になる理由についても、具体的な実践方法とともに紹介します。
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妊活に「亜鉛」が欠かせない理由
妊活における栄養管理といえば、真っ先に思い浮かぶのは「葉酸」や「鉄分」かもしれません。
しかし、もう一つ忘れてはならないのが「亜鉛」です。
このミネラルは、妊娠を目指す体づくりの土台に関わっており、その影響は実に多方面に及びます。
精子・卵子の質を支える基盤栄養素
亜鉛は体内で300以上の酵素の働きに関与し、DNAの合成や細胞分裂、抗酸化、ホルモン合成など、あらゆる生命活動に欠かせない存在です。
特に卵子や精子の質に関係する機能を支えており、受精能力や胚の発育にも影響を与えます。
精子や卵子は日々体内でつくられていますが、その質が妊娠の可能性を大きく左右します。
亜鉛が不足していると、受精が起こりにくくなったり、着床の成功率が低下したりする可能性も指摘されています。
「摂ればOK」ではない?吸収率の落とし穴
亜鉛は体内で作ることができず、また貯蔵もされにくいため、日々の食事から継続的に摂取する必要があります。
ただし問題は「どれだけ摂ったか」ではなく、「どれだけ吸収できたか」にあります。
胃腸の調子が悪い、慢性的に下痢がち、食生活が偏っている……。
これらの条件が重なると、せっかく亜鉛を摂っていても体に吸収されず、そのまま排出されてしまうのです。
だからこそ、亜鉛を「摂ること」と「吸収できる体にすること」はセットで考える必要があります。
男性妊活と亜鉛:精子の質を左右する要素
妊活というと、女性側の準備に意識が向きがちですが、妊娠の成立には男性側の健康も同じくらい重要です。
特に精子の質には、亜鉛が深く関わっています。
精子形成と機能を支える
亜鉛は、精巣内で精子をつくる過程において重要な役割を果たしています。
精子の濃度、運動性、正常形態、DNAの安定性のいずれにも関与しており、亜鉛不足になるとこれらの指標が低下するリスクが高まります。
また、精液中の亜鉛濃度が高いほど、精子の状態が良いという研究も多く報告されています。つまり、亜鉛は精子の“質と量”の両面を支える重要な栄養素なのです。
テストステロンと前立腺の維持にも必須
亜鉛は、男性ホルモンであるテストステロンの合成にも必要不可欠です。テストステロンは精子形成を促すだけでなく、性欲や活力の維持にも関わります。
また、前立腺の健康維持にも亜鉛は重要であり、不足すると前立腺機能の低下にもつながる可能性があります。
サプリで改善する?研究から見る効果のばらつき

一部の小規模な臨床研究では、亜鉛サプリメントの摂取によって精子の質が改善されたという結果も出ています。しかし、大規模な試験では有意差が見られなかった例もあり、サプリによる効果には個人差があります。
そのため、単にサプリメントに頼るのではなく、食事や生活習慣全体を整えることが、男性妊活においてはより重要です。
女性妊活と亜鉛:卵子・ホルモン・着床すべてに影響
女性の体は、妊娠の成立から出産、そして育児に至るまで、ホルモンや免疫、代謝などが繊細に連携しています。
こうした生理機能をスムーズに保つうえで、亜鉛は見えないところで大きな役割を果たしています。
卵母細胞の成熟と胚の発育に不可欠
卵子は排卵されるまでに、さまざまな細胞分裂と成長のステップを経ます。 亜鉛はこの過程、特に卵子の減数分裂や排卵の直前の成熟段階に欠かせません。
さらに、受精後の胚が細胞分裂を繰り返して着床するまでの初期段階にも亜鉛は関与しています。
つまり、卵子の「質」を左右するだけでなく、受精後の発育にも大きく関わっているのです。
(引用) In the event of overwhelming oxidative stress where zinc is deficient and antioxidant function goes down, i.e., in SOD where zinc is required for activity, resulting in destruction of NOS and NO consumption, inadequate zinc for zinc finger proteins, and disruption in zinc ion concentration ([Zn2+]) and homeostasis. In this detrimental pathway, the oocyte may not develop properly and/or prematurely exits MII arrest resulting in decreased maturation competence and inability to be fertilized
(和訳)
亜鉛が欠乏し、抗酸化機能が低下するような過度の酸化ストレス、すなわち活性に亜鉛を必要とするSODにおいて、NOSとNO消費の破壊、ジンクフィンガータンパク質への亜鉛の供給不足、亜鉛イオン濃度([Zn2+])と恒常性の破綻が生じます。この有害な経路では、卵母細胞は適切に発育せず、またはMII停止から早期に脱落し、成熟能力の低下と受精不能につながる可能性があります。(出典)
Camp, O. G., Bembenek, J. N., Goud, P. T., Awonuga, A. O., & Abu-Soud, H. M. (2023). The Implications of Insufficient Zinc on the Generation of Oxidative Stress Leading to Decreased Oocyte Quality. Reproductive Sciences, 30(7), 2069–2078.
DOI: 10.1007/s43032-023-01212-0 PMCID: PMC11047769 PMID: 36920672
ホルモンバランスと子宮環境の調整役
女性ホルモンのバランスが乱れると、生理不順や排卵障害が起こりやすくなります。
亜鉛は、エストロゲンやプロゲステロンといったホルモンの合成・分泌に関与し、
月経周期を整える役割も果たしています。
また、着床しやすい子宮内膜をつくるためには、炎症のコントロールや免疫調整も必要ですが、これらもまた亜鉛の働きが土台となっています。
妊娠までの期間にも影響が出る?
最近の研究では、血中の亜鉛濃度が低い女性ほど、妊娠までにかかる時間が長くなる(Time to Pregnancyが延びる)傾向があると報告されています。
(引用)
Women who had lower zinc (time ratio, 1.20 (0.99–1.44)) or who had lower selenium concentrations (1.19 (1.01–1.40)) had a longer time to pregnancy, equivalent to a median difference in time to pregnancy of around 0.6 months.
(和訳)
亜鉛濃度が低かった女性(時間比1.20(0.99~1.44))やセレン濃度が低かった女性(1.19(1.01~1.40))は妊娠までの期間が長く、妊娠までの期間の中央値の差は約0.6か月でした。
(出典情報)DOI: 10.3390/nu11071609
著者: Grieger, J.A., Grzeskowiak, L.E., Wilson, R.L., Bianco-Miotto, T., Leemaqz, S.Y., Jankovic-Karasoulos, T., Perkins, A.V., Norman, R.J., Dekker, G.A., Roberts, C.T.
発表年: 2019年
論文タイトル: Maternal Selenium, Copper and Zinc Concentrations in Early Pregnancy, and the Association with Fertility
雑誌名: Nutrients
巻号: Vol. 11, No. 1609
つまり、亜鉛不足は“妊娠しづらい体”につながる可能性があるということです。
妊娠中・出産後の亜鉛不足がもたらすリスク
亜鉛は妊娠が成立した後も、“母体と赤ちゃんの両方の健康”を支える重要なミネラルです。
妊娠中は特に、胎児への亜鉛移行量が増えるため、母体の亜鉛が不足しやすくなります。 その結果、さまざまなリスクが高まる可能性があります。
厚生労働省の推奨摂取量
日本人の推奨食事摂取量(RDA)では、成人男性11 mg/日、成人女性8 mg/日。 妊娠中は+3 mg程度増加し、授乳期はさらに増加が推奨されています。
(出典)
厚生労働省: 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
(備考)
◦ 「成人男性11 mg/日、成人女性8 mg/日」といった推奨摂取量は、同報告書内の「Ⅱ 各論 1 エネルギー・栄養素 ミネラル(微量ミネラル)」の章において、生理的必要量や95%人口基準摂取量(95% population reference intake PRI)等の科学的根拠に基づいて算出されています。
◦ 「妊娠中は+3 mg程度増加」という推奨は、同報告書内の「Ⅱ 各論 2 対象特性 妊婦・授乳婦」の章、および妊娠期間中の非ヘム鉄吸収や鉄利用に関する研究 に基づき示されています。
◦ 「授乳期はさらに増加が推奨される」という点も、授乳婦の特性を考慮した同報告書の検討、および授乳による乳汁を介した鉄の損失に関する研究 に裏付けられています。
子どもへの影響
・低出生体重や胎児発育遅延(FGR)
母体の亜鉛不足は、胎児が十分に育たないまま出産を迎えるリスクを高めるとされます。体重が軽く生まれたり、発育が遅れたりする傾向があります。
・神経管閉鎖障害や先天異常
妊娠初期に亜鉛が不足すると、赤ちゃんの脳や脊髄がうまく形成されない「神経管閉鎖障害」などのリスクが上がると指摘されています。
・免疫機能の未熟化と感染症のリスク
亜鉛は免疫細胞の発達にも関わっており、不足すると新生児・乳児の感染症リスクが高くなります。
・神経発達や精神運動発達への影響
脳の発達がスムーズに進まないことで、成長後の発達遅延や学習能力への影響も報告されています。
母体への影響
・産後の回復の遅れ
出産後の子宮回復や傷の治りには細胞分裂や免疫の働きが重要です。
ここでも亜鉛の不足は回復の遅れにつながります。
・感染症や乳腺炎のリスク増加
産後は免疫力が低下しがちですが、亜鉛が足りていないとその傾向がさらに強まり、感染症リスクが高まります。
・母乳の分泌量や質にも影響
亜鉛は乳汁分泌にも関ります。
不足すると母乳の量が減ったり、栄養価が下がったりする可能性があります。
・慢性疲労や気分の落ち込み
産後のエネルギー産生やメンタルバランスにも関係します。
回復期に強い疲労感やうつ傾向が出やすくなることも報告されています。
「摂っているのに効かない」人のための吸収視点
「サプリメントで亜鉛をしっかり摂っているのに、なかなか効果を実感できない…」そんな声も少なくありません。実は、亜鉛は“摂ること”よりも“吸収できること”のほうが重要なミネラルです。
亜鉛吸収の仕組みと腸の状態の関係
亜鉛は主に小腸で吸収されますが、腸のバリア機能が弱っていると、摂取した亜鉛がそのまま排出されてしまいます。
たとえば、慢性的な下痢や腸の炎症(過敏性腸症候群、炎症性腸疾患など)を抱えている人は、亜鉛を吸収しにくい状態にある可能性があります。
また、フィチン酸(玄米・豆類に含まれる)や過剰なカルシウム・鉄の摂取は、亜鉛の吸収を妨げることもあるため、食べ合わせにも注意が必要です。
腸内環境の整備が吸収を高める
腸内環境を整えることは、亜鉛に限らず栄養全体の吸収率を高める鍵になります。
プロバイオティクス(乳酸菌・ビフィズス菌など)や食物繊維を意識的に取り入れることで、腸内細菌のバランスを整え、吸収力の底上げが期待できます。
つまり、「亜鉛を摂る前に、まず腸を整える」。これが、妊活中に最も意識したい栄養戦略のひとつです。
メンタルと亜鉛の意外な関係
妊活中は、先の見えない不安やプレッシャーが重なり、心が疲れやすくなる時期です。そんなときに注目したいのが、実は「亜鉛」です。亜鉛は“心のバランス”にも深く関わっているミネラルなのです。
神経伝達物質の調整を担う
亜鉛は、セロトニンやドーパミンなど、気分や意欲に影響する神経伝達物質の合成や働きをサポートします。
これらの物質が不足すると、無気力になったり、気分が沈みがちになったりすることがあります。
近年の研究でも、うつ病患者に亜鉛不足が多く見られるというデータがあります。
栄養状態とメンタルヘルスの関連性が注目されています。
ストレス応答と抗酸化に関与
ストレスを感じると、体の中で炎症や酸化ストレスが起きやすくなります。亜鉛には、こうした“ストレスダメージ”を和らげる働きもあります。
ストレスホルモンのバランス調整や、抗酸化作用を通じて、ストレスに強い体づくりを支えてくれるのです。
妊活において、「心の状態」は体のリズムにも影響します。亜鉛をしっかり補うことで、体の準備だけでなく、心の安定もサポートできるかもしれません。
妊活における亜鉛の取り入れ方:実践ガイド
亜鉛の重要性は理解できたとしても、実際にどのように取り入れればいいのか迷う方も多いでしょう。
ここでは、日常生活に無理なく取り入れる方法をご紹介します。
食事で摂る:吸収しやすい組み合わせとは
まず基本は、食事からの摂取です。亜鉛を多く含む代表的な食品には以下のようなものがあります。
・牡蠣(圧倒的に高含有)
・牛肉(特に赤身)
・レバー
・卵、ナッツ類、かぼちゃの種、豆類
ただし、亜鉛は吸収率がそれほど高くない栄養素。
動物性タンパク質と一緒に摂ることで吸収が高まりやすくなります。
逆にフィチン酸を多く含む玄米や豆類だけだと吸収を妨げることもあります。
また、ビタミンCを多く含む食材(ブロッコリー、ピーマン、いちごなど)と組み合わせると、ミネラル全体の吸収が良くなる傾向があります。

サプリメントの活用はどう判断する?
食事だけで必要量を満たすのが難しい場合は、サプリメントの使用も一つの選択肢です。特に妊娠中や授乳中は、食事からだけでは補いきれないケースもあります。
ただし、サプリでの過剰摂取には注意が必要です。
長期間の過剰摂取は、銅や鉄の吸収を阻害するリスクもあります。
医師や栄養のの指導のもと、適切な量を選ぶようにしましょう。
吸収できる体のメンテナンス
「亜鉛をどれだけ摂るか」だけでなく、「どれだけ吸収できる体か」も妊活では大切です。
腸内環境を整え、胃腸の働きをサポートする生活習慣(適度な運動、発酵食品の摂取、十分な睡眠など)を意識することで、亜鉛だけでなく他の栄養素の効率も高まります。
まとめ:妊娠準備は「摂取+吸収」で整える
妊活を成功させるためには、体の内側から整える栄養戦略が欠かせません。その中でも、亜鉛はとくに重要な役割を担っています。
・卵子や精子の質を高め、ホルモンバランスを整える
・妊娠成立後の胎児の健やかな発育を支える
・産後の母体の回復や免疫維持にも影響する
・メンタルバランスやストレス耐性にも深く関わる
こうした多面的な効果があるからこそ、「どれだけ摂っているか」だけでは不十分です。大切なのは、「体がきちんと吸収できる状態にあるかどうか」。
日々の食事を見直すこと、腸内環境を整えること、必要であれば医療専門家の指導のもとサプリメントを活用すること――。
妊活中のあなたが、少しでも早く、そして健やかに新しい命と出会えるよう、まずは“見えない土台”である栄養と吸収力に目を向けてみてください。
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【妊活ブログ執筆者】

〈資格〉
- 薬剤師
- 鍼灸師
- コウノトリ鍼灸師
- ONP認定栄養カウンセラー
- 睡眠健康指導士上級
- 婦人科セラピー協会会員
- 日本生殖医学会会員
- 統合医療生殖学会会員(旧子宝カウンセラーの会)









