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妊活×ビタミンD|8割が不足している栄養素が、妊娠力を左右する

妊活を頑張っているあなたは、きっと毎日いろんなことに気をつけて過ごしていると思います。 排卵日をチェックしたり、基礎体温をつけたり、食事や運動にも気を配っているかもしれません。

そんな努力の中で、もしかすると見落とされがちなのが「ビタミンD」です。

「日光に当たれば大丈夫」「特に問題はないと思ってる」――そう感じている方も多いかもしれません。 でも、実際には日本人女性の8割以上がビタミンD不足に該当すると言われています。 しかも、ビタミンDが不足すると、妊娠率や着床率が下がり、流産リスクが高まるという研究結果もあるのです。

当グループでも、なかなか妊娠できなかった女性が、医療機関で血中ビタミンD濃度を調べてもらうケースがあるのですが、8割以上の方がビタミンD不足を指摘されています。

「そんなに関係あるの?」「そもそもどこから始めればいいの?」 そう思ったあなたに向けて、この記事では妊活とビタミンDの深い関係、そして今日から実践できる栄養管理の工夫についてお話しします。

少しだけ立ち止まって、体の中から妊娠しやすい環境を整えてみませんか?

ビタミンDと妊娠の関係とは?

「ビタミンDって、骨の健康に関係する栄養素でしょ?」

そんなふうに思われがちですが、実は妊娠の成立やその後の経過にまで影響を及ぼす、大切な“ホルモン様物質”でもあるのです。

ビタミンDは体内で活性化されると、卵巣・子宮内膜・胎盤など、生殖に関わる多くの組織に働きかけます。具体的には、卵胞の発育、ホルモンバランスの調整、胚の着床、初期胎盤の形成、さらには免疫の調整まで、多岐にわたる生理機能をサポートしています。

ビタミンD受容体は生殖器に集中している

最新の研究では、卵巣や子宮内膜、胎盤といった生殖器官にはビタミンDの受容体が豊富に存在し、ホルモンのように働いて生殖機能を高めることが分かっています。

つまり、ビタミンDが十分に体内で働く状態であれば、妊娠の成立に有利な条件が整うというわけです。

着床率・妊娠率・出生率を高める効果

ビタミンDが充足している女性は、体外受精(IVF)において着床率・妊娠率・出生率が高く、流産率が低いという傾向が、複数のシステマティックレビューや臨床研究で報告されています。

特に「血中ビタミンD濃度が10 ng/mL上がると、妊娠率が約10%上昇する」といった具体的なデータもあり、栄養状態が妊活に与える影響は決して小さくないのです。

男性側の妊娠力にも影響

さらに最近では、ビタミンDが男性の精子の運動性や成熟にも関係していることが明らかになってきました。

つまり、妊娠を望むカップルにとって、ビタミンDは女性だけでなく、男性にも重要な栄養素だということです。

ビタミンD不足が妊活に与えるリスク

ビタミンDの大切さがわかっても、「自分は足りているかどうか分からない」と感じる方も多いかもしれません。

実は、ビタミンD不足は思っている以上に身近な問題です。とくに妊娠を望む女性にとっては、注意が必要なリスクファクターとなり得るのです。

日本の妊婦の80%以上がビタミンD不足

日本国内での複数の大規模調査によると、**妊婦の8割以上がビタミンD不足(血中25(OH)D濃度20ng/mL未満)**とされています。

さらに、妊娠中期の冬季にはその割合が9割近くに達する地域もあり、特に日照時間の短い地域では深刻な課題となっています。

不足による妊娠経過への影響

ビタミンDが不足している女性は、妊娠率の低下だけでなく、妊娠後も以下のようなトラブルを抱えやすい傾向があります。

・着床不全や流産のリスク増加

・妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスク上昇

・胎児の発育不全(SGA:発育遅延)や早産、低出生体重児

・出生児の骨・歯の形成異常や神経発達への影響

これらのリスクは、妊娠前からの栄養状態と深く関係しており、「妊活期=準備期間」にこそビタミンDの充足が欠かせないという考え方が、医療現場でも広がりつつあります。

ビタミンDの吸収を妨げる生活習慣

ビタミンDを意識して摂取していても、なかなか体に取り込まれていない――そんなケースも珍しくありません。

実は、体質や生活習慣によって「吸収しにくい状態」になっている人が多いのです。

たんぱく質不足と吸収障害

ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、腸での吸収や血中での運搬にはたんぱく質が不可欠です。

たんぱく質が不足すると、「ビタミンD結合タンパク(DBP)」やアルブミンといった輸送役の物質が減少し、吸収効率が著しく落ちてしまいます。

コレステロール不足による合成低下

皮膚でのビタミンD合成には「7-デヒドロコレステロール」が必要です。
これはコレステロールの代謝産物だからです。

つまり、極端な脂質制限やコレステロール不足は、体内でのビタミンD合成能力そのものを下げてしまうのです。

便秘や胃酸の分泌低下もリスクに

腸内環境が乱れていたり、便秘が続いていたりすると、腸の動きや消化液の分泌が滞り、ビタミンDの吸収効率が低下します。

また、加齢や胃酸抑制剤の長期使用によって胃酸分泌が低下している場合、脂溶性ビタミンの乳化が不十分になり、体内利用率が大きく落ちる可能性があります。


これらの要因が重なると、「いくらビタミンDを摂っても効かない」という状態になってしまいます。

妊活の第一歩は、ただ栄養を摂ることではなく、“吸収されやすい体”をつくることなのです。

妊活におけるビタミンD戦略

妊娠を望むなら、「摂るだけ」で終わらせない戦略的な栄養管理が必要です。

ビタミンDは、妊活のあらゆるフェーズで重要な役割を果たします。だからこそ、“量”と“質”の両面から考えることが大切です。

ビタミンD補給の国際的な推奨量

国際的なガイドラインでは、次の量が広く推奨されています。
成人のビタミンD補給量として1,000〜2,000 IU/日(25〜50 µg)

また、上限摂取量は4,000 IU/日(100 μg)とされています。
これを超えない範囲であれば安全性も高いとされています。

(引用) A daily vitamin D supplementation with 2000 IU (50 µg) may be considered a simple, effective, and safe dosage to prevent and treat vitamin D deficiency in the adult general population. (和訳) 毎日 2000 IU (50 µg) のビタミン D サプリメントの摂取は、成人一般人口におけるビタミン D 欠乏症の予防と治療のためのシンプルで効果的かつ安全な投与量と考えられます。 (出典)

  • Pludowski P, Grant WB, Karras SN, Zittermann A, Pilz S. Vitamin D Supplementation: A Review of the Evidence Arguing for a Daily Dose of 2000 International Units (50 µg) of Vitamin D for Adults in the General Population. Nutrients. 2024 Jan 29;16(3):391. doi: 10.3390/nu16030391. • Dědečková E, Viták R, Jirásko M, Králová M, Topolčan O, Pecen L, Fürst T, Brož P, Kučera R. Vitamin D3 Supplementation: Comparison of 1000 IU and 2000 IU Dose in Healthy Individuals. Life (Basel). 2023 Mar 16;13(3):808. doi: 10.3390/life13030808. • Bleizgys A. Vitamin D Dosing: Basic Principles and a Brief Algorithm (2021 Update). Nutrients. 2021 Dec 10;13(12):4415. doi: 10.3390/nu13124415.

ビタミンD(成人) 推奨量   9㎍/日 耐容上限量 100㎍/日 (出典)厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ビタミン(脂溶性ビタミン) https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316466.pdf

食事+日光+サプリメント+体質改善の四本柱

ビタミンDを効果的に取り入れるには、次の4つの要素が揃ってこそ、真の吸収と活用が実現します。

食事からの摂取:脂質を適度に含む食事を意識することで、吸収効率が向上します。特に魚や卵、きのこ類はビタミンDが豊富です。

適度な日光浴:皮膚での合成には紫外線(UVB)が必要。1日15〜30分、手や顔を日光に当てる習慣が望まれます。

サプリメントの活用:日照不足の時期や不足が明らかな場合は、補助的にサプリメントを活用しましょう。

体質の改善:たんぱく質やコレステロールの摂取、便秘や胃酸低下の改善など、吸収を妨げる要因の見直しも忘れてはなりません。

“何をどれだけ摂るか”だけでなく、“どれだけ吸収できる体になっているか”。

この視点を持つことが、ビタミンDを活かす鍵になります。

まとめ

妊活におけるビタミンDの役割は、想像以上に広く、そして深いものです。

着床や妊娠率の向上だけでなく、流産の予防や胎児の健康な発育にまで影響を及ぼすことが、数多くの研究によって明らかにされています。

とはいえ、ただサプリメントを摂るだけでは、十分とは言えません。

慢性的なたんぱく質不足、極端な脂質制限、腸内環境の乱れ、消化機能の低下――これらの要因がひとつでもあると、ビタミンDは吸収されず、力を発揮できないのです。

だからこそ、妊活の中でビタミンDを活かすためには、「摂取」と「吸収」、両方の視点を持つことが欠かせません。

今日からできることとして、まずは以下を試してみてください。

・1日3食、たんぱく質と脂質をバランスよく摂る

・適度な日光浴を日常に取り入れる

・便秘や胃腸トラブルがある場合は体質改善に取り組む

「妊活にビタミンDが必要」という視点を持つことで、あなたの妊活の結果が大きく変わるかもしれません。

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鍼灸院ひまり院長 平田泰之

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