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妊活にプロテインは必要?吸収できるタンパク質の選び方と摂り方

妊活中に必要な栄養といえば、まず思い浮かぶのは葉酸や鉄分ではないでしょうか。けれど、実は見落とされがちな「タンパク質不足」こそが、妊娠力に大きな影響を与えているかもしれません。 私の元にも、「栄養は気をつけているのに妊娠しない」という相談がよく届きます。その中で共通しているのが、たんぱく質の摂取量が足りていないという事実でした。

妊活にプロテインが注目される今、単にプロテインを飲むだけでは意味がありません。

重要なのは、“きちんと吸収できているか”という視点です。

「でも、プロテインってたくさん種類があるし、結局どれを飲めばいいの?」 「食事も気をつけてるけど、体にちゃんと届いてるか不安…」

そんな不安を抱えるあなたに、この記事では「妊娠しやすい体づくりに欠かせないタンパク質の摂り方」について、具体的に・段階的にご紹介します。

まずは、できることから。 吸収できるタンパク質を味方につけて、妊娠しやすい体をつくりましょう。

妊娠したい人が見落としがちな「タンパク質不足」の深刻さ

妊活を始めると、葉酸や鉄分といった特定の栄養素には意識が向きやすいものです。しかし、見落とされがちなのが「タンパク質不足」。実はこの不足が、妊娠の可能性を下げてしまっているケースが少なくありません。

成人女性のタンパク質の推奨摂取量は1日50g (出典) 厚生労働省 食事摂取基準(2025年版)

タンパク質は、ホルモン・酵素・免疫細胞といった“体の中のあらゆる機能”の材料です。つまり、妊娠という生命活動を支えるあらゆる仕組みは、タンパク質なくして成り立たないのです。慢性的に不足している状態では、生殖機能はもちろん、ホルモンバランスや子宮の健康、さらには胎児の成長にまで影響を及ぼすことがわかっています。

あなたが今、なかなか妊娠できずに悩んでいるとしたら――

もしかしたら、その根底に「目に見えないタンパク質不足」があるかもしれません。

このセクションでは、男女別に見られる“タンパク質不足の具体的な影響”を解説します。

女性への影響:ホルモンと子宮のバランスが崩れる

妊娠の準備段階において、女性の体はホルモンによって精密にコントロールされています。ところが、慢性的なタンパク質不足があると、そのホルモンの材料自体が足りなくなってしまいます。

実際に見られるのは、卵巣機能の低下、ホルモン分泌の乱れ、卵子の質の低下といった現象です。さらに深刻なのは、子宮内膜の状態が不安定になり、不正出血や月経不順が起こりやすくなる点。これらの症状は、妊娠しづらい状態を示すサインであることも多いのです。

また、妊娠後もタンパク質の不足はリスクを伴います。山梨大学の研究では、妊娠初期にタンパク質の摂取量が極端に低かった母親から生まれた子どもに、3歳時点で発達の遅れが見られる傾向があると報告されています。

(引用)

大規模な追跡調査から、妊娠初期においてたんぱく質のエネルギー比率が極端に低い母親から生まれた子どもは、標準的なたんぱく質のエネルギー比率の母親から生まれた子どもと比べて 3歳時点で発達の遅れが見られる割合が高いことを明らかにしました。 (出典)

  • 論文名: Maternal protein intake in early pregnancy and child development at age 3 years
  • 著者: Kunio Miyake, Kazuki Mochizuki, Megumi Kushima, Ryoji Shinohara, Sayaka Horiuchi, Sanae Otawa, Yuka Akiyama, Tadao Ooka, Reiji Kojima, Hiroshi Yokomichi, Zentaro Yamagata and the Japan Environment and Children’s Study Group
  • 掲載誌: Pediatric Research
  • DOI: 10.1038/s41390-022-02435-8
  • 掲載日: 2023年1月9日付

研究実施機関: 国立大学法人山梨大学 エコチル調査甲信ユニットセンター (研究担当者: 三宅邦夫 社会医学講座准教授、センター長: 山縣然太朗 社会医学講座教授)

プレスリリース発表日: 令和5年1月16日(2023年1月16日)

参照元URL: https://www.yamanashi.ac.jp/wp-content/uploads/2023/01/20230116pr.pdf [New Source]

つまり、「妊娠前から十分なタンパク質を摂っておくこと」が、その後の母体と胎児の健康にも直結するわけです。

男性への影響:精子の形成や性ホルモンの生成がダウン

妊活は女性だけの問題ではありません。妊娠の半分は、男性側の生殖機能にかかっています。しかし、男性もまた「タンパク質不足」が見逃されがちです。

男性においてタンパク質が不足すると、まず影響を受けるのが精子の形成能力です。
精子の材料自体がタンパク質であるため、慢性的な不足状態では、精子の数・運動性・DNAの質がいずれも低下する傾向があります。

さらに、男性ホルモンであるテストステロンなどの性ホルモンも、タンパク質を基に体内で合成されます。したがって、タンパク質不足は性ホルモンの分泌量にも影響を及ぼし、妊娠させる力そのものを落としてしまうのです。

つまり、夫婦で妊活に取り組むなら、男性側も日々の食事や栄養状態を見直す必要があります。タンパク質をしっかり摂ることは、「妊娠しやすい精子」を育てる土台なのです。

「プロテイン」ではなく「吸収できるタンパク質」が鍵

「妊活にプロテインがいい」と聞くと、多くの人が真っ先に市販のプロテインパウダーを手に取るかもしれません。ですが、ここで注意しておきたいことがあります。
「摂取すること」と「吸収されること」は全く別だという点です。

私たちの体は、摂取したタンパク質をすべてそのまま使えるわけではありません。
大切なのは、胃や腸でしっかりと分解・吸収されてはじめて、ホルモンや酵素、免疫細胞の材料として活用されるということ。

実は、市販のプロテインパウダーの多くは分子量が大きく、そのままでは体に吸収されにくい構造になっています。特に消化機能が弱っている人は、「せっかくプロテインを飲んでも、ほとんど吸収されていない」ということすら起こり得るのです。

このセクションでは、「どうすれば体に負担をかけず、確実にたんぱく質を吸収できるか」という視点で、実践的な方法をお伝えしていきます。

第一段階:アミノ酸・ジペプチド・トリペプチドで体を整える

妊活中にいきなり大量のプロテインを飲む?
その前に考えておきたいのが、今のあなたの「消化力は十分か?」という点です。

胃酸や消化酵素がしっかり分泌されていない状態では、せっかく摂ったプロテインも分解されずに体外へ排出されてしまうことがあります。実際、慢性的なタンパク質不足が続くと、消化酵素自体の分泌量も減っていくという悪循環が生まれるのです。

そのため、まず最初のステップとしておすすめなのが、アミノ酸やジペプチド・トリペプチドといった「体に負担をかけずに吸収できる最小単位のタンパク質」を摂ること。

これらは分解の必要がなく、腸からスムーズに吸収されるため、消化器官が弱っている人にも適しています。

この段階で栄養状態が改善され、胃酸や酵素の分泌が活性化してくると、次のステップへと進む準備が整ってきます。

第二段階:加水分解プロテインで吸収効率を意識

体内の消化力がある程度回復してきたら、次に取り入れたいのが「加水分解プロテイン(ペプチドプロテイン)」です。これは、あらかじめ酵素によって分解された状態のプロテインで、分子量が小さいため消化・吸収の効率が非常に高いのが特徴です。

具体的には、ホエイ由来のプロテインの中でも、分子量500〜1,500程度の低分子ペプチドを主成分とした製品が、吸収の観点から優れています。市販の一般的なプロテインは分子量が1万〜15万と大きいため、消化が不十分だとほとんど吸収されません。

注意したいのは、プロテインを摂ること自体が目的になってしまわないこと。重要なのは「どんな状態のタンパク質を、どんな体調のときに摂るか」という視点です。

胃酸やペプシン、膵消化酵素といった消化機能がある程度整ってきたタイミングで、初めて加水分解プロテインを効果的に活用できるようになります。

焦らずに段階を踏むことが、妊活における“タンパク質戦略”の成功につながるのです。

日常生活で気をつけたい「妊活×プロテイン」習慣

ここまで読んで、「なるほど、吸収の観点が大事なんだ」と感じた方も多いのではないでしょうか。しかし、実際の生活では、どんな食習慣がタンパク質不足を引き起こしているのでしょうか。

一つ大きなポイントとなるのが「朝食の欠食」です。

特に女性はダイエット志向や忙しさから、朝を抜く人が少なくありません。
これがタンパク質不足を助長しているのです。
朝食を抜けば、その日の摂取量の1/3を逃すことになります。
たとえ昼・夜で頑張っても“全体のバランス”は取り戻せません。

また、偏った食事や外食中心の生活では、脂質や糖質は多くても、たんぱく質は意外と不足しがち。妊娠を目指すのであれば、「プロテインを飲む前に、まずは1日3食を整える」ことが基本です。

さらに、ストレスや交感神経の過緊張も消化力を下げる要因となります。副交感神経が優位なリラックス状態で食事をすることで、胃酸や酵素の分泌も促進され、プロテインの吸収効率も上がっていくのです。

つまり、妊活中のたんぱく質摂取は「何を飲むか」だけでなく、「どう食べるか」「どんな環境で吸収させるか」までを含めて、日常的にデザインしていく必要があります。

まとめ

「妊活 プロテイン」という言葉が広まりつつある今、必要なのは“飲めばいい”という感覚ではなく、“吸収できる体づくり”という戦略的な視点です。

まずは、アミノ酸・ジペプチド・トリペプチドといった、消化の負担が少ないタンパク質で体を整えること。そこから胃酸や酵素の分泌が安定してきたタイミングで、分子量の小さい加水分解プロテインを取り入れる。この段階的なアプローチが、妊娠しやすい体の土台をつくっていきます。

また、日々の食事習慣や生活リズムも、タンパク質の吸収効率を左右する大きな要素です。朝食をしっかり摂る、ストレスをためこまない、消化の整った環境で食べる…。
こうした小さな積み重ねが、確実にあなたの体を変えていきます。

妊娠は奇跡ではありません。体の正常な機能です。

整った栄養状態と、計画的なタンパク質戦略がその確率を高めるのです。今日からできることを、ひとつずつ始めていきましょう。

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鍼灸院ひまり院長 平田泰之

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